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感染管理関連情報

歯科の院内感染対策を再考する

日本の歯科医院における感染予防対策の不備が、読売新聞で批判された。わが国の医療法は医療安全の一環で感染予防対策が求められる。しかし、罰則はなく、どこまでの対応が必要なのか明確な基準がないために対策が遅れているのは確かだ。対策が日本より進んでいるとされる海外の事情等から、日本の院内感染の現状、課題を探った。



海外事情に見る現状と課題

西ヨーロッパや中国都市部では行政が基準を設け、所要の対策がなされていない場合は勧告され、遵守されなければ診療が停止される。特に中国では、抜き打ち検査で不備が見つかると医業の差し止めなどのペナルティーを科せる。

アメリカは保険会社が契約先の歯科医院に所定の安全対策(感染予防を含む)を契約時に要求する。それが守られなければ契約違反となり、法的トラブルに発展する。

日本は「外来環」を除けば、感染に関連する請求は日本歯科医療管理学会が平成5年に制定した「感染予防ガイドライン」により、「初再診料、技術料に含まれる」との解釈が一般的となっている。しかし、国際標準であるスタンダード・プリコーション(標準予防策)※を各医院で実施すると、再診料では見合わないコストが発生する。

※スタンダード・プリコーション
全ての患者の体液、血液が感染しているのを前提にして例外なしに感染防御の手段を講じること。グローブなどのディスポ使用、タービンなどの患者ごと交換などが要求される。医科では、唾液を汚染媒介物とは見なさない傾向があるが、歯科では、治療中に血液、歯肉溝浸出液が唾液に混じるため、血液と同等の遮断レベルとしている。


患者数の多さがコスト増大の要因に

そのコスト増大の第一の要因は1日当たりの患者数にある。日本の患者数は年々減少傾向にあるとはいえ、国際的に見るとその多さは突出している。患者ごとにディスポ品を逐次交換し、器具滅菌を励行するとその数は膨大となり、大学病院レベルでもスタンダード・プリコーションを実施するのは頭の痛い問題で、医療用具としての基準を満たさない安価な代替品を使用するケースも考えられる。

感染予防の国際標準とされるCDCガイドラインもスタンダード・プリコーションを採用している。滅菌後の保管については滅菌バッグへの封入を推奨しているが、器具を劣化から守る注油のタイミングまでは留意していない。逆に、日本ではクラスN(Naked:滅菌バッグに入れず裸で滅菌する)に分類される重力置換式オートクレーブが普及しており、かえって滅菌、注油がスムーズにできるのではないかと考えられている。

さらに、血液感染症予防の効果が高いサックバック防止弁付きタービンは、日本製品の性能が他国製品を上回っていることが知られている。



消毒・滅菌スペースもネックに

歯科の感染予防が国際的に注目されたきっかけはAIDSや中国のSARSの流行だった。日本はAIDS患者が着実に増えているにもかかわらず、社会の関心はそれほど高くなく、感染予防への危機感も薄いようで、歯科の感染予防にかかるコストを公的保険で手当てするか、追加コストの負担を窓口で請求(混合診療となる)するかなどの議論がなされないままになっている。

欧米や中国などの感染予防対策は、汚染物の動線管理とスタッフを汚染物と遮断する機械洗浄の導入、さらに中腔物を確実に滅菌するクラスBオートクレーブの使用が主流となっている。日本でも機械洗浄やクラスBオートクレーブが普及し始めているが、いずれも高価で、一定のスペースを要する。

ここ10年の国際的な流れとしては、汚染物の逆流を防ぐために汚染、洗浄、滅菌とエリアを厳密に区分する傾向がみられる。しかし、これを文字通りに励行すると大きな面積の消毒滅菌スペースが要求される。日本のようにスペースの限られた歯科医院が多い国では難しいのも事実だ。

この課題に対して数年前からアメリカを中心に流行しているのが、感染予防の安全性、確実性、そして省スペースを両立させた一体型の感染予防キャビネットだ。

同キャビネットは汚染(赤色)→清潔(青色)が可視でき、洗浄、消毒、滅菌、保管の四つの機能を備えたもので、日本の歯科医院でも導入が可能と考え、日本の一部メーカーが導入を検討した経緯がある。



日本の感染予防対策は、患者を水平感染、交差感染から防御するとの観点から論じられてきた。しかし、血液や唾液が付着した汚染物を最も危険な状態で取り扱うのは、診療や消毒・滅菌の業務に携わるスタッフだ。そのため、労働安全衛生上、経営者が払うべき配慮として捉えられるようになってきた。特に針刺し事故の発生を防ぐためには、治療中の感染防御とともに最初の洗浄工程でスタッフの手に器具が触れる必要のない機械洗浄が日本でも重視されている。

機械洗浄は段階的熱水洗浄と超音波洗浄の二つの方法がある。段階的熱水洗浄にはそれ自体で一定の消毒効果があるものと、そうでないものがあるが、いずれの方法を採用しても、機械洗浄の工程を経るだけで、血液感染症の針刺しによる伝播のリスクは大幅に減少する。

逆に、最も危険と警告されるのが流水下での手洗いで、針刺しのリスクに加えて、跳ね飛んだ水による汚染の広がりという追加的なリスクが生じる。

日本やアメリカでは、タンパク破壊作用のある消毒液を使用するケースが多いが、ヨーロッパでは急速に制限されるようになってきた。理由は(1)薬液が強い毒性を持つことから、労働安全衛生上、問題がある。(2)タンパクを破壊、凝固させるとインストゥルメントに頑固に付着し、劣化を早めるリスクがあるの二つ。

ヨーロッパで使用が広がっているのは界面活性剤だ。HBV、HCV、HIVなど血液感染症や、接触感染のリスクのある多くのウイルスは、周囲を油膜(エンベローブ)で覆ったエンベローブウイルスのため、界面活性剤で油膜を破壊するだけで不活性化(感染力を失う)される。安全なだけでなく、環境負荷も低く、今後の国際標準となるものと見られている。

『日本歯科新聞』2014年6月24日付、第3面。

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